手元の異変に気付き、覚醒する。違和感を感じる右手は、暖かなぬくもりに包み込まれていた。
アンジュ・カトリーナ。
彼女は私の手を固く握り締めていた。もしかして、一晩中…?
うつろうつろと、首をコクン、と動かす彼女を横目に、起こさないようそっと体を、首の上だけ動かす。いつもよりも遥かに遅い起床時刻となっていた。どうやら、大分長い間寝ていたようだ…。健屋に処方された薬を飲んで以来、大分体は楽になっていた。このままもう一眠りするべきだろうか。だが、お腹はそうは許してくれないらしい。食欲はあまりないが、軽く何か口にしたかった。少しだけ体を浮かせたつもりだったのだが、思った以上の音がした。
「アンジュ」
起こすつもりはなかったのだが、彼女の目がハッと開いた。
「…おはよう、リゼ」
「おはよう、アンジュ」グゥー
お腹の音が聞こえてしまった、恥ずかしい。微笑むアンジュは、少し待ってろと言って、私の手を離して行ってしまった。
「ベッドで物を食べるのは、本当は余りお行儀良くないんだけどな」
そういって、彼女は私が寝ているベッドに1杯のおかゆを持ってきてくれた。
暖かい器が、心まで穏やかになって行くようであった。